こんにちは。キーデンタルクリニック歯科医師の中村希美です。
「子供が転んで歯をぶつけた」親にとってはとても心配な状況ですよね。歯の外傷は、乳歯は1~3歳頃、永久歯は7~9歳頃に多く起こると言われています。乳歯の場合は自分で歩けるようになる頃で、日常生活で転倒した場合に多く起こります。永久歯の場合はスポーツや事故、喧嘩などが歯の外傷の大きな原因となっています。どちらも、歯の外傷は前歯に起こることが多く、見た目にも直結する部分であることから、心理的なダメージも大きいものです。しかし、歯の外傷は早めの適切な対処によって良い治療結果が得られることが多いため、その必要性を知っておくと安心です!
歯が外傷を受けるとどんなことが起こる?
1.歯が欠ける(歯冠破折)
1)亀裂が入る
2)少し欠ける(神経に達していない状態)
3)大きく欠ける(神経が出ている状態)
2.歯根が折れる
1)歯根の深い部分で横方向に折れる
2)歯冠(歯の頭の部分)から歯根にかけて縦に折れる
3.歯が脱臼する
1)歯の打撲(震盪)
2)歯が揺れる(亜脱臼)
3)歯の位置がずれる(脱臼)
4)歯が内側に沈み込む(陥入)
5)歯が脱落する(完全脱臼)
このように、歯の外傷といっても重症度は様々です。対処法や治療法はそれぞれのケースによって異なります。
歯の外傷に対するそれぞれの対処法・治療法
1.歯が欠ける(歯冠破折)
1)亀裂が入る(不完全破折)
歯にヒビが入っている状態です。レントゲンでは写りませんが、見た目にヒビが確認できます。
<対処法・治療法>
症状がない場合には経過観察をします。冷たいものがしみる場合には歯の表面をコーティングしてその後の症状の経過をみます。
2)少し欠ける(神経に達していない状態)
歯がエナメル質または象牙質の範囲で欠けてしまっている状態です。
<対処法・治療法>
欠けた破片が残っている時は、ぬらしたティッシュに包むなど、湿らせた状態で歯科医院に持って行きましょう。接着剤でつけられるようであればその破片をくっつけるか、破片がない場合には歯科用のプラスチックの詰め物で治します。
3)大きく欠ける(神経が出ている状態)
歯が欠けて歯髄(神経)が出ている状態です。神経の出てしまっている部分には感染が起こっています。
<対処法・治療法>
2)の場合と同様、欠けた破片は持参しましょう。出てしまっている神経の状況、程度によって、受傷してから時間があまり経っていなければ、感染した部分のみ神経を取り除き、極力神経の保存を試みます。受傷して1日以上経過してしまった場合には全ての神経を取り除きます。経過を見て、破折片を戻してくっつけるか、歯科用プラスチックを詰めて歯の形を回復します。
2.歯根が折れる
1)歯根の深い部分で横方向に折れる(歯根破折)
歯根が奥の部分で真っ二つに折れて、見た目的には歯が伸びてきたように見えます。レントゲン上では歯根側と歯冠側に分断されてしまっています。歯には動揺がみられます。
<対処法・治療法>
動揺する歯冠をいち早く固定する必要があります。固定は両隣の歯を支えとし、2〜3ヶ月ほど接着剤でしっかりと固定し、安静にした状態で骨とくっつくのを待ちます。神経が分断されて感染が起こってしまっている場合には、その兆候が出た時点で神経の治療を行います。この場合歯根側の破折片の神経には触れません。
2)歯冠(歯の頭の部分)から歯根にかけて縦に折れる(歯根・歯冠破折)
歯冠から歯根まで縦に割れてしまっている状態です。
<対処法・治療法>
割れている位置が歯根の浅い位置で止まっていれば極力歯の保存を試みますが、深い位置に達している場合には歯を残すのが難しくなってきます。
3.歯が脱臼する
1)歯の打撲(震盪(しんとう)
動揺も特に見られず、欠けてもいませんが、歯がダメージを受けており、触れたり叩くと敏感に痛みを感じます。
<対処法・治療法>
そのまま経過観察をしますが、ダメージによって、歯の神経・血管が根元で切断されてしまっている場合があります。その場合、神経がしんでしまい、だんだんと歯が茶色やグレーがかったような変色が起こってきます。この兆候が見られる場合、神経をとる治療が必要になります。
2)歯が揺れる(亜脱臼)
ぶつけた衝撃で歯を支えている歯根膜が一部断裂し、歯が揺れますが、歯の位置は変わっていない状態です。
<対処法・治療法>
歯の動揺がひどかったり、噛むと痛みがある場合には両隣の歯と2週間以上固定し、歯の揺れがおさまるまで安静にします。 1)の場合と同様、その後歯の神経がしんでしまった兆候が見られれば神経の治療をします。
3)歯の位置がずれる(脱臼)
ぶつけた衝撃で歯が横にずれたり、飛び出してきている状態です。
<対処法・治療法>
正しい位置へ戻し、両隣の歯と2週間以上固定します。神経がしんでいる兆候が見られれば神経の治療をします。
4)歯が内側に沈み込む(陥入)
ぶつけて歯が内側にのめり込んでいる状態です。見た目には歯が短くなったように見えます。
<対処法・治療法>
歯を正しい位置に戻し、ダメージを受けた骨の治りを待つためにも長期間両隣の歯と固定します(6週間程度)。神経・血管は確実に切断されているため、固定開始から10日以内くらいに神経の処置を行う必要があります。子供で永久歯の歯根が完成していない場合には経過を見て神経がしんでいる兆候が現れれば神経の治療をします。
5)歯が脱落する(完全脱臼)
衝撃で歯が完全に抜けてしまった状態です。
<対処法・治療法>
抜けた歯の根の部分を触らないようにして、牛乳または生理食塩水、なければ水に浸した状態で一刻も早く歯科に持って行き、元の位置に戻して固定をする必要があります。学校の保健室には歯の保存液が置かれていることが多いです。早く戻すほど、その後の経過が良好となります。神経は完全に分断されているため、10日以内くらいに神経を取る処置をします。
乳歯の場合には生え変わり時期や永久歯の位置によって元に戻さず抜けたまま様子を見る場合もあります。
永久歯には影響出る?
乳歯をぶつけた際に気になるのは、ぶつけた乳歯が抜けた後に生えてくる後継永久歯に影響が出るかどうかではないでしょうか。50〜65%の確率で何らかの影響が現れると言われています。
1.エナメル質の白斑・黄斑
2.エナメル質などの歯質減形成・形成不全
3.歯冠・歯根の彎曲や屈曲
4.歯根の形成停止
5.萌出遅延
などが挙げられます。
いずれにしても、永久歯が生える時期、生えてからわかることなので、長期的な経過の確認が必要になります。
まとめ
ぶつけたり、転んで口元が傷ついた時は、唇や歯ぐきからの出血も多く、お子さんは衝撃や痛みで泣くでしょうし、親御さんも焦ってしまうかもしれません。もし見た目に何もないように見えても、異変が起こっていることもよくあります。まずは落ち着いて口元以外に大きな怪我や異変がはないか確認し、早めに歯科を受診することをお勧めします。また、衝撃の程度が大きいほど、歯には大きなダメージが加わっています。そのような場合はより早急な対処が大切になります。外傷がひどい場合は早めに診てもらえますので、すぐに歯科に連絡をするようにしましょう。また、外傷の場合は治療を受けた後にしばらくしてから異変が起こることもあるので、長期的に経過を見るためにも定期検診を受けるようにしましょう。
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