歯の根を調べるときや虫歯の進行度をチェックするとき、レントゲンを撮影することがありますよね。最近では、歯科医院でもCTを導入しているところが増えましたので、検査の折にCT撮影をすることもあります。歯科医院では、CTとレントゲンはどのように使い分けているのでしょうか。また、CTではどのようなことが分かるのかについても探っていきましょう。
CTとレントゲンの違い
いずれも目に見えない内部組織を撮影するということは同じですが、目的や得意な分野、被爆量、費用など、さまざまな違いがあります。
画像
レントゲンは平面的に写りますので、縦方向の疾病や症状は見ることができますが、水平方向の疾病や症状はどの程度なのかを把握することができません。水平方向の状態がすべて重なって撮影されますので、色の濃淡で前方にあるのか後方にあるのかを判断します。
一方、CTは立体的に撮影しますので、病巣の位置や骨の内部、歯と顎の関係などすべてが手に取るように分かります。レントゲンを読み解くにはかなりの臨床経験を積む必要がありますが、CTは分かりやすい画像で表示されますので、歯科医師だけでなく患者に説明する際にも便利です。
使用される場面
歯科医院では、検査を始める前や治療を開始する前に、全体像を把握するためにレントゲンを撮影します。レントゲン撮影をした上で、どうしてもCT画像が必要なときだけ、CTを撮影することになります。
通常の虫歯治療や噛み合わせの確認などではレントゲンだけを用います。人工歯根を外科的に埋めていくインプラントを実施する前の術前診断や歯槽骨欠損部の正確な把握、根管治療における診断、抜歯時に歯根が折れてしまったときの診断などにおいては、縦方向だけでなく水平方向も正確に判断できるCTを用います。また、顎関節に異常が見られるときや顎関節の外科的手術が必要なときなども、CT撮影を実施することがあります。
被爆量
レントゲンの被曝量は少なく、日本人が1年間に自然界から受ける被曝量(1.1mSv)の30分の1~100分の1程度です。CTは精度にもよりますが0.5mSv程度になりますので、もちろん健康被害を及ぼすほどではありませんが、レントゲン撮影と比べると被曝量が多いと言えるでしょう。
歯科医院では1年でCTを撮影するのは1回~2回までを推奨していることが多いです。他の歯科医院や病院でCTを撮影したときは、かならずCT撮影を受けた回数と受けた日時を歯科医師に告げるようにしましょう。被曝量を気にし過ぎて撮影をせず、正確な診断や治療がができなくなっては困りますので、CTを撮影するメリット・デメリットを歯科医師と相談した上で判断しましょう。
費用
レントゲンはパノラマ撮影で顎全体を撮影するときは、保険適用後で1000~5000円ほどかかります。虫歯など局所的にデンタルレントゲンを撮影するときは、保険適用後で700~2000円ほどになります。
一方、CTは保険が適用されないときと適用されるときがあります。病名が明らかなときは保険適用内になり、4000~10000円ほどになります。ただし、CTを撮影する前にレントゲンを撮影することが一般的です。
CT撮影で分かること
レントゲンでは全体像や漠然とした形だけしか分かりませんが、CTを用いると今まで突き止められなかった病気の正体などが分かることもあります。
歯根破折
歯根部が割れたりひびが入ったりする歯根破折。割れた部分がレントゲンに写れば良いのですが、水平方向にひびが入っているときなどはレントゲンで確認することができません。だからと言って、歯ぐきを切開して確認するのは大変ですよね。そのようなときにはCTが威力を発揮します。どのような方向に亀裂やひびが入っていても、CTなら詳しく撮影することができるのです。
副鼻腔炎
上顎の歯根部付近に広がる空洞、副鼻腔。この部分に炎症が起こると、歯の痛みなのか副鼻腔炎なのか判別することが難しいです。レントゲンでは空洞は空洞にしか写りませんので炎症の正体を突き止めることはできませんが、CTなら炎症部分を確認し、副鼻腔炎の治療を開始することができます。
歯根部の膿
歯根の先端に膿が詰まっていると、歯ぐきの腫れや痛みの原因になります。下の歯の歯根部に膿が詰まっているときはレントゲンでも確認しやすいのですが、上の歯の歯根部には他の組織も重なって写っていますので、膿部分をレントゲンで確認することは難しくなります。ですが、歯科用CTなら、下も上も簡単に膿を特定することができます。痛みの箇所が分かりにくいときは、CTが頼りになるのです。
インプラントの術前検査
インプラントを入れるときは、どの程度の太さでどの程度の長さの人工歯根が適切かを判断することが重要になります。レントゲンだけでは歯ぐき上部から神経までの距離や顎の骨の厚みなどを正確に測ることができませんので、歯科用CTを用いて正確に検査をします。
根管治療
歯の神経を抜いて根管治療をするときも、歯科用CTを用いることで痛みの再発を防ぐことができます。歯の根は複雑な形をしていることも多く、1本だけのこともありますが2~4本に分かれていることもあります。神経や感染源が残らないように丁寧に取り、空洞部分に薬剤を詰めていかなくてはなりません。
手の感触だけに頼っていると、神経の通っている管を見落としたりする可能性もあります。薬剤がしっかりと詰まっていないと細菌が繁殖し、再度、痛みや腫れを引き起こしていまいかねません。目や手の感触だけでは分からない部分を正確に知るためにも、歯科用CTの撮影が必要になるのです。
親知らずの抜歯前検査
親知らずならすべて抜いてしまっても良いというわけではありません。特に下の親知らずの根周辺には神経や血管が入っている下顎管がありますので、抜歯によって下顎管が傷つくと想定されるときは抜歯以外の治療を考えなくてはいけません。
レントゲンでも下顎管の位置をある程度特定することができますが、親知らずの根に近いかどうかを正確に知るためにはCT撮影も実施する方がより正確な判断ができるでしょう。
歯列矯正前の検査
歯列矯正をすることでどのような歯並びになるかを、歯科用CTを使って正確にシミュレーションすることができます。噛み合わせがどうなるかも予想することができますので、より美しい歯並びに矯正することができるのです。
過剰歯の測定
永久歯が普通以上の本数ある過剰歯。そのまま生えてしまうと、歯並びが悪くなったり、必要な歯が生えて来られなくなったり、歯ぐきの横側や内側などの正常でない場所から生えてしまったりすることにもなります。
歯ぐきの内部にある時点で抜歯するのが良いのですが、レントゲンでは正確な位置を捉えることが難しく、不必要な部分まで切開することにもなりかねません。歯科用CTを使って過剰歯の正確な位置を捉え、歯ぐきを切開する部分を最小限にして過剰歯の抜歯を実施します。
レントゲンとCTを上手に使い分けよう
CTは立体的に表示されるだけでなく解像度も高いですので、正確な診断には最適なツールとも言えます。ですが、レントゲンと比べると被爆量も高くなりますので、いつでも歯科用CTを使えば良いというものではありません。レントゲンで問題ないときはレントゲン撮影を利用し、外科的手術や膿の確認が必要なときにCTを用いるようにしましょう。現在のところ、歯科用CTを導入している歯科医院は限られています。CTが必要だと思われる場合は、CTを導入している歯科医院を探してから出向くようにしてください。
確かな技術で納得の治療を
ムシバラボを運営するキーデンタルクリニックは、東京の赤坂見附駅から徒歩1分、永田町駅から徒歩3分の歯科医院です。できるだけ抜かない削らない治療を心がけ、痛みの少ない治療方法や先進治療を取り入れることで患者様の負担を軽減するようにしています。良い歯医者さんと巡り会えない方は是非一度、ご来院ください。