滑舌が悪いと指摘されることが多い人。また、「もう一度、言って」と聞き返されることが多い人。もしかしたら、構音障害かもしれません。構音障害にはさまざまな原因がありますが、歯科医院で専門的な治療を受けることで改善することが可能なものもあります。どのような構音障害が歯科医院で治療できるのか、また、具体的にはどのような治療を受けるのかについてご説明します。
構音障害とは
構音障害とは言葉を発する過程に問題がある障害を指します。発音障害と呼ぶこともあります。通常の場合は、6歳くらいまでの間にアからンまでのすべての言葉を正確に発音できるようになりますが、同年代の子どもと比べて明らかに発音が不明瞭な場合は構音障害が疑われることもあります。
構音障害は、単に発音の問題だけでなく、発達障害や知的障害、周囲とのコミュニケーション上の問題などが絡み合っていることがあります。治療する前に原因をしっかりと特定し、身体的な観点だけでなく精神的な観点からもサポートしていくことが必要になるのです。
構音障害の原因
構音障害の原因は1つとは限りません。複数の原因が絡み合っていることもありますし、原因が特定できないこともあります。一般的な構音障害の原因としては、次の理由が考えられます。
先天性な口周りの器質障害
生まれつき上あごの部分や唇に裂傷などがあり、正確な発音ができないことがあります。このような症状を口蓋裂や口唇裂、口唇口蓋裂と呼び、外科的手術と発音指導で治療することが可能です。元々の症状にもよりますが、手術と発音指導で正常な発音を獲得できることもありますし、やや問題は残るものの正常に近い発音を獲得できることもあります。
また、舌の裏側にある舌小帯(ぜつしょうたい)が前方についているために舌の稼働域が狭く、正確な発音をすることができないこともあります。このような症状を舌小帯短縮症と呼びます。
その他にも、鼻から呼吸が漏れてしまって正確な発音ができないこともあります。先天的にこのような症状が見られる場合は、鼻咽喉閉鎖機能不全と呼ばれます。
後天的な器質障害
頭部の外傷や口腔腫瘍のために、発音が正確に出来なくなってしまうことがあります。その他にも、筋委縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病、ジストニアなどの筋肉や神経に病変が生じる疾病によって、発音が不明瞭になることもあります。
聴力に問題がある場合
先天的な難聴や高熱などによる難聴によって、正確な音が聞き取れずに発音できないという可能性もあります。補聴器を使用したり人工内耳埋め込み手術などが必要になったりすることもありますが、機能回復訓練も同時に行うことが求められます。
舌癖がある場合
永久歯の生え変わりや指しゃぶりなどの習慣によって、前歯を舌でつつくことが日常的になっている子どももいます。このような癖を舌癖(ぜつへき)と言いますが、舌癖があると舌の位置が正常な場所に固定されず、発音にも問題が出てくるようになります。
歯列や噛み合わせに問題がある場合
歯並びや噛み合わせに問題があり、正確な発音ができないこともあります。歯列矯正等でただしい噛み合わせ・歯列に戻すことで、発音の明瞭さを取り戻すこともできます。
構音障害の治療
どの原因で構音障害が起こっているかによって、治療法は変わって来ます。また、舌小帯短縮症や口唇口蓋裂などの外科的手術が必要な場合も、手術が終わってから言語聴覚士とともに正しい発音をするトレーニング「言語療法」を行うことが必要になるケースが多くあります。自宅でも可能なトレーニングをいくつか紹介します。
鼻から呼吸が抜けて発音が不明瞭な場合
鼻咽喉閉鎖機能不全などの鼻から呼吸が抜けて発音が不明瞭になる場合は、鼻から息を抜かずに口から息を吐き出す訓練が必要になります。水が入ったペットボトルにストローを挿し、息を吹き込む訓練等が一般的です。また、同じくストローを使って風車を回したり、ろうそくの火を吹き消したりして、呼吸が口からだけ出るように訓練します。
舌の位置や癖に問題がある場合
舌が正常な場所にセットされないために発音が不明瞭な場合や舌癖のために発音が不明瞭な場合は、舌の位置を治す訓練が必要です。舌をとがらせて口腔内の特定の場所を押したり、舌を口腔内で上下させたりします。
歯科医院でできる構音障害治療
構音障害にはさまざまな原因がありますが、ほとんどの場合は歯科医院で治療を行うことができます。
歯科医師による外科的治療
舌小帯短縮症のために発音が不明瞭な場合は、歯科医師による舌小帯伸展術を受けることができます。手術時間は5~10分ほどで、医療保険適用手術となります。局所麻酔が必要になりますので、乳児の場合は手術タイミングをいつにするか医師としっかりと話し合いましょう。
また、鼻咽喉閉鎖機能不全のために発音が正確に出来ない場合も、歯科医師による手術を受けます。患者の状態によっても異なりますが、口蓋後方移動手術や咽頭弁移植などを行います。
歯科医師による矯正治療
歯列や噛み合わせに問題があるために発音にも問題が生じている場合は、矯正治療を実施する歯科医院で治療を実施する必要があります。噛み合わせなどのずれの程度や患者の年齢によっても治療期間は1ヶ月~2年ほどと大きく変わってきます。
矯正した歯列や噛み合わせを維持するために、治療中や治療後にマウスピースを装着することもあります。ほとんどの場合は夜間就寝中のみの装着となりますので、日常生活には大きな影響は出てきません。
矯正治療と医療費控除
矯正治療は医療保険が適用されず、医療費控除の対象となりませんので、治療費が高くなれば患者の金銭的負担も大きくなってしまいます。構音障害の治療のために矯正治療を行うときは、自由診療とはなるものの医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、1年間の医療費が10万円(総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%)を超えたときに、支払った医療費の一部が所得控除される制度です。確定申告を行う際に、構音障害のための矯正治療であることが分かる診断書と治療にかかった明細書を提出しましょう。
その他の装具作成による治療
発音を改善するために、歯科医院で口腔内にはめこむ装具を作成してもらうこともあります。例えば口蓋裂の人には上あごの裂傷部分をふさぐ口蓋床を作成したり、鼻咽喉閉鎖機能不全によって発音が不明瞭になる人には鼻咽喉部補綴装具を作成したりします。呼吸が鼻に漏れにくいように鼻咽喉を防ぐ栓を作ることもあります。
その他にも、軟口蓋の動きがスムーズでないために発音障害が出てしまっている場合もあります。その場合には、軟口蓋を持ちあげる軟口蓋拳上装置を作成して装着することもあります。
まずは歯科医師に相談してみよう
歯や歯茎の悩みを歯科医師に相談することは当然ですが、発音の悩みや口腔内の悩みも、まずは歯科医師に相談してみるようにしましょう。発音が不明瞭なまま放置しておくと、人と関わることが苦手になったり、人前で話すことが嫌いになったりすることもあります。治療は早ければ早いほど、改善するまでの時間も短縮できますので、気になったら診察を受けるようにしてくださいね。
確かな技術で納得の治療を
ムシバラボを運営するキーデンタルクリニックは、東京の赤坂見附駅から徒歩1分、永田町駅から徒歩3分の歯科医院です。できるだけ抜かない削らない治療を心がけ、痛みの少ない治療方法や先進治療を取り入れることで患者様の負担を軽減するようにしています。良い歯医者さんと巡り会えない方は是非一度、ご来院ください。