受け口とは、噛み合わせた時に下の前歯が上の前歯よりも前にある状態のことを言います。専門用語では「下顎前突（かがくぜんとつ）」や「反対咬合」などと呼ばれており、成長とともに悪化して見た目や食べたり話したりする機能、歯の健康にも悪影響を及ぼしすことが多いため、できる限り早めに対処することが望まれる不正咬合です。今回は受け口になってしまう原因、受け口の治療方法、受け口の治療費について解説していきます。

受け口の種類

　受け口には大きく分けて２種類あります。

1.歯性下顎前突症

　骨格的には問題がなく、前歯の噛み合わせだけが逆になっている場合です。

2.骨格性下顎前突症

　骨の発育異常が原因になっていて、下顎の骨が過剰に成長してしまったり、上顎の骨の成長が不十分であったりする場合に起こります。

受け口になる原因

　受け口になる原因にはいくつかあります。

1.遺伝によるもの

　骨格性の受け口の場合は遺伝が原因になっていることが多いのが特徴です。両親のどちらかが受け口である場合、子供にも遺伝する確率が高くなります。

2.前歯の生える向きによるもの

　上の前歯が内側に傾き、下の前歯が外側に傾いて生えてしまった場合に受け口になってしまうことがあります。

3.癖の影響によるもの

　舌で下の歯並びを内側から押すような癖や、下のあごを前に突き出す癖などがあると、下顎の成長が促されて受け口になってしまうことがあります。また口で呼吸をする癖（口呼吸）があると、鼻呼吸が行われないために上顎がきちんと成長しなかったり、口からの空気の通り道を作るために、舌を下方に位置させることで、下の歯を前に押すような力が働いたりすることで受け口になってしまうことがあります。

受け口の治療方法

　受け口の治療方法は子供と大人で違いがあります。

1.子供の受け口の治療方法

　受け口は３歳児検診で全体の４〜５％くらいに見つかるとされています。２歳までの受け口の約半数は自然に治ると言われていますが、３歳以降で受け口の場合は、そのほとんどが永久歯に生え変わっても受け口になってしまうと言われています。そのため、３歳の時点で受け口が見つかったら、出来る限り早めに治療に取り掛かることをおすすめします。

　治療方法としては、６歳くらいまでの受け口に対しては、ムーシールドと呼ばれるマウスピースタイプの矯正装置を眠っている間に装着する方法や、骨格性の受け口である可能性が高い場合には、下顎の成長を抑制する「チンキャップ」、上顎の成長を促進させるような「上顎前方牽引装置」というような頭部につける装置を、家にいる間に装着する治療法があります。また、小学生以上で乳歯と永久歯が混ざっている時期には、口の中に装着する取り外し式の矯正装置を使って上の顎の成長を促す、というような治療法があります。

2.大人の受け口の治療方法

　大人で受け口の場合、歯並びだけが逆で骨格に問題がない場合、また骨格性に異常があっても軽度の場合には、矯正治療のみで治すことができます。主にワイヤー矯正やマウスピース矯正などが行われます。

　骨格性に異常のある受け口の場合には、矯正治療だけでは対処しきれません。そのため、顎の骨を切って位置を修正する外科手術に加えて歯の矯正治療を行う必要があります。これは外科矯正と呼ばれます。

受け口の治療の値段

　受け口の治療の値段は症例や治療の内容、歯科医院によっても大きく変わってきます。子供の受け口の治療の場合、軽度なケースでマウスピース装着だけで治るような場合には５万円〜20万円程度ですが、それ以外の治療も必要になるケースで永久歯が全て生え変わるまで行われる場合には、25万円〜60万円程度かかることが多いようです。

　大人の受け口の治療だと、矯正治療だけで治せる場合では自費治療となり50万円〜120万円くらいが相場ですが、外科矯正が必要となるケースでは、保険が適用となるため、入院の費用も込みで55万円〜70万円くらいが目安となります。

まとめ

　大人で受け口の場合、手術をしなければ治らないケースも珍しくありません。受け口の兆候が見られたら、なるべく子供のうちから治療を受けることで、骨格に異常が出るのを回避することができます。気になる方は矯正治療のできる歯科医院で一度診てもらうことをおすすめします。