良い歯並び・噛み合わせ、というと、重なりなくきれいに並んだ歯を感じする人が多いかもしれません。しかし、歯や顎を健康に保つためには、ただ単に歯の並びが良いだけではダメで、顎の運動が健康的に行える噛み合わせであることが大切です。そしてそれには犬歯が大きな役割を果たしており、その犬歯を中心とした「犬歯誘導咬合」という噛み合わせであることが歯や顎の健康のために理想的だと言われています。犬歯誘導咬合とは一体どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
犬歯の役割
犬歯誘導咬合とは何か、ということを知る前に、まず犬歯にはどのような特徴があるのか、どのような役割があるのかを知っておきましょう。犬歯とは、前から数えて3番目に位置する歯で「糸切り歯」とも呼ばれており、槍のようにとがった形をしています。この形は本来、食べ物を切り裂いたりする目的だと言われています。そして、歯の頭の部分に関しても歯根部分に関しても、すべての歯の中で最も長く、また頑丈な作りをしているため、他の歯が抜けてしまっても、通常一番最後まで長持ちする歯です。
このように犬歯は頑丈で、他の歯と比べ、強い力にも耐えられる構造となっているため、噛む運動、特に顎を横方向に動かす際に、他の歯に異常な力がかからないように力を受け止めて、他の歯を保護する役割があります。
犬歯誘導咬合とは
犬歯誘導咬合とは、歯を噛み合わせた状態から、横にずらしていった時に犬歯だけが当たってその動きを誘導するような噛み合わせを呼びます。つまり、噛んだ状態から横にずらして止めた時に、上下の奥歯には隙間が空いて噛み合わず、犬歯だけが当たっている状態です。
なぜこのような噛み合わせの状態がいいのか、という理由として、奥歯は垂直方向(真上)からかかる力には十分耐え得るのに対し、水平方向(横方向)からかかる力には弱く、ダメージを受けやすいため、その力を頑丈な犬歯が受け止めてくれれば、奥歯が過剰な力を受けることがなくなるからです。
犬歯誘導咬合でないと起こりうる様々な症状
犬歯誘導が行われない噛み合わせでは、奥歯に横方向からの力が強くかかってしまうことで、咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)と呼ばれる状態を引き起こし、次のような様々な症状が出てくることがあります。
- 奥歯に亀裂が入ったり、割れたりする
- 奥歯に知覚過敏や痛みが起こる
- 奥歯の亀裂から細菌が入り、虫歯になりやすくなる
- 奥歯がグラグラしてくる
- 歯周病が進行しやすくなる
- 顎関節症を引き起こす
犬歯誘導でなくなってしまう原因
理想的な噛み合わせ様式と言われる犬歯誘導ですが、そうでなくなってしまう原因としては次のようなものがあります。
- もともとの歯並び(八重歯など)
- 虫歯で歯が欠けた、歯を抜いた
- 歯の治療後、歯の当たり具合が変わった
- 歯ぎしりによる歯のすり減り
犬歯誘導咬合でない人はどうすればいい?
「自分は犬歯誘導じゃないから歯を早く失ってしまうの?」と不安に人もいると思います。しかし、理想的な純粋な犬歯誘導ができている人というのは実際それほど存在せず、ほとんどの人は犬歯誘導ではないのが現状です。そして、犬歯誘導でない人の全てが早く歯を失っているわけでもありません。
大事なのは全体的にバランスのとれた噛み合わせであり、特定の歯に過剰な負担がかかりさえしなければ犬歯誘導がなくても、噛み合わせが崩壊したり、歯を早く失ったりするわけではないと言っていいでしょう。そのため、犬歯誘導咬合でないとしても、そんなに気にすることはありません。もし噛み合わせによる過剰な負担が歯にかかって歯や顎に何らかの症状が出ている場合、歯や顎に過剰な負担を与えるような行動、例えば歯を無意識にカチカチ合わせてしまう癖や食いしばる癖がないか、そして夜間に歯ぎしりをしていないか、硬いものを食べ過ぎていないか、ということを疑ってみた方が良いかもしれません。
まとめ
犬歯誘導咬合であることは理想的ではありますが、それにこだわりすぎる必要はありません。歯を長持ちさせるためには、噛み合わせを崩壊させないためにも虫歯などを放置しないこと、歯科に定期的に通って噛み合わせのチェックをしてもらいバランスのとれた噛み合わせをキープすること、バランスの悪い噛み合わせである場合には矯正治療も考慮に入れること、歯ぎしりなどの過剰な力のコントロールをすることなどが大切です。
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