顎骨炎という言葉はあまり聞きなれないと思いますが、これは文字通り顎の骨の炎症のことで、非常に重症化したり、ときに命に関わったりする場合もあります。そしてこの病気は虫歯の悪化が原因で発症することもあり、決して誰にとっても他人事とはいえない病気であると言えます。今回は、顎骨炎とはどのようなものなのか、顎骨炎にならないためにはどうしたらよいのかをご説明します。
顎骨炎とは
顎骨炎は炎症が起こる場所や広がり方などに応じて「顎骨骨髄炎」「顎骨骨膜炎」「蜂窩織炎」というような病名がつけられます。骨は皮膚や粘膜、筋肉などで覆われているため、普通は炎症を起こしにくい部分なのですが、顎の骨に関しては別で、顎骨炎を起こすことはそれほど珍しくありません。それはなぜかというと、歯が直接骨に埋まっているため、歯からの感染が骨に波及しやすいからです。
このように、顎骨に細菌感染を起こす経路は主に歯からで、口の中の細菌により虫歯から歯髄炎が起こって顎骨に感染が広がるケースをはじめ、歯周病の炎症や親知らずの周囲の炎症、抜歯後の細菌感染が顎骨に広がるケースも見られます。
顎骨炎の症状とは
顎骨炎の症状としては次のようなものが挙げられます。
1.強い痛み・腫れ
歯が原因で起こっている場合、原因歯の痛みや噛んだ時の痛みに加えて、周囲の歯にも痛みが出てきます。また、歯茎の粘膜や周囲の皮膚が熱を持ち、赤くなって腫れ上がることでさらに痛みが強くなります。ただし、骨髄炎のように内部に炎症の中心がある場合には、赤みや腫れがはっきりと出ないこともあります。
2.顎下リンパ節の腫れ
顎の下のリンパ節が腫れてきます。
3.歯の動揺
原因となる歯はもちろんのこと、その周囲の歯にも動揺が起こってくることがあります。
4.唾を飲み込むと痛い
奥歯が炎症の原因となっている場合、唾を飲み込むだけで痛みを感じることがあります。
5.口があまり開かなくなる
奥歯が原因の場合、口があまり開かなくなってくることがあります。
6.熱・倦怠感・食欲不振
全身的にも症状が現れ、高熱や倦怠感、食欲不振が現れてきます。
7.下唇の感覚の麻痺
顎の骨の内部に炎症がある骨髄炎では、下唇の感覚が麻痺することもあります。
顎骨炎がひどくなるとこんなに恐ろしいことも
顎骨炎は悪化すると重症化し、上あごの場合は目や脳へ、下あごの場合は舌下や扁桃、首、前胸部にまで炎症が波及することがあります。また、この状態に気づかず放置していると、炎症を起こしている細菌が血液中に入り込んで増殖し、全身に感染が広がってしまう「敗血症(はいけつしょう)」を起こして、命に関わる状態になることもあります。特に糖尿病などで免疫力が低下している人においては、このような状況が起こりやすくなるため、注意が必要です。
顎骨炎の治療法
顎骨炎であることがわかったら、できるだけ早めに抗菌薬を使って原因菌を攻撃することが大切です。顎骨炎を起こす原因菌は通常、抗菌薬がよく効くものがほとんどですので早めに対処すれば重症化することを防ぐことができます。
もしも膿溜まり(膿瘍)ができている場合には歯茎を切開し、膿を速やかに排出させることで症状をできるだけ早く改善することができます。そして、急性的な強い症状が落ち着いてきたら、原因歯の治療(根の治療もしくは抜歯)を行います。
重症化してしまっている場合には、歯科では対応できずに、大学病院などに入院して抗生剤の点滴などを受けるなどの処置が必要になることもあります。
まとめ
虫歯を放置しておけばおくほど治りにくくなり、治療に期間もかかってしまうものですが、周囲に感染が広がることで命にまで関わることもあるのです。虫歯のある人は放置せずなるべく早めに治療することを心がけましょう。
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