こんにちは。キーデンタルクリニック歯科医師の中村希美です。
生えたばかりの歯が変色していたり、不自然なくぼみがある場合、その歯は「エナメル質形成不全」の可能性があります。このエナメル質形成不全は決して珍しいものではなく、歯科の現場でもよく目にします。エナメル質形成不全の歯は正常な歯に比べて歯質が弱く、虫歯になりやすいという弱点がありますが、エナメル質形成不全の特徴とケアの方法を知っておくことで歯を守ることも十分可能です。ぜひこの機会に一緒にエナメル質形成不全についての知識を身につけていきましょう。
エナメル質形成不全とは
エナメル質形成不全とは、歯の一番外側のエナメル質と呼ばれる層が何らかの原因できちんと作られなかった状態のことをいいます。永久歯では全体の10%ほどで起こるとされており、乳歯でも起こることがあります。体の中でも最も硬いエナメル質が不完全な状態であるため、虫歯になりやすく、虫歯が進行しやすい特徴があります。
エナメル質形成不全の見た目の特徴
・歯に濃く白くなっている部分がある
・歯に黄色い部分や茶色い部分がある
・歯にくぼみがある
・歯の表面がでこぼこしている
・歯が黄色っぽく小さくて、歯と歯の間に隙間がある
など。
エナメル質形成不全の原因
1.全身状態に起因するもの
エナメル質が形成される時期に何か全身的な障害が起こると、エナメル質形成が阻害されることがあり、主に次のような障害がその原因となります。全身状態が原因の場合には複数の歯に左右対称にエナメル質形成不全が現れてきます。
・栄養障害
歯の成分であるカルシウムやリン酸の不足やビタミン不足、とくにビタミンD欠乏症の人にはエナメル質に形成障害が起こることがあります。
・発疹性の病気、熱性の病気
生後1年ぐらいの時期に発疹性の病気や熱性の病気にかかると、エナメル質の元になるエナメル芽細胞が影響を受けてエナメル質の形成が阻害されることがあるとされています。
・過度のフッ素摂取
高濃度のフッ素を長期間にわたって摂取すると歯に変色を起こしたり、歯にくぼみができることがあります。これを歯牙フッ素症と呼んでいますが、日本で生活をする中ではあまり心配はいりません。
・早産
早産で生まれた子供にエナメル質形成不全が多いことが報告されています。
・薬物の影響
摂取した薬の影響でエナメル質の形成が阻害される可能性があります。
2.局所的な原因に起因するもの
局所的な原因で起こる場合には原因の場所にのみエナメル質形成不全が起こります。
・乳歯の外傷・虫歯
乳歯を強くぶつけてしまった場合、奥に控えている永久歯にダメージを与えてしまったり、乳歯の虫歯がひどくなって歯根の周囲に膿瘍を作ってしまうと永久歯のエナメル質形成に影響が出ることがあります。
3.遺伝性のもの
まれに遺伝性にエナメル質形成不全を起こすこともあります。頻度は8千人〜1万4千人に1人と言われています。この場合乳歯、永久歯のすべての歯にエナメル質形成不全が起こります。
エナメル質形成不全の治療法
1.フッ素塗布で経過観察
エナメル質形成不全の歯はエナメル質のバリアが不十分であるため、酸に溶けやすくなっています。そこで歯を強化するために定期的に歯科医院でフッ素塗布を受けたり、歯の状態を観察してもらうことが強く勧められます。
2.詰め物をしたり被せ物をする
歯が軟らかくなっていたり、穴が空いていたり、知覚過敏のあるケースでは、場合により歯科用レジンというプラスチックの材料でカバーすることがあります。全体的に色が変わっていたり歯の大きさが小さくて審美的な面で気になる場合には、セラミックの被せ物で見た目を改善をすることが可能です。また、遺伝性の場合で全体的に形成不全が起こる場合には、歯がすり減りやすく、噛み合わせの低下や崩壊が起こるのを防ぐためにも、被せ物をすることが勧めらます。
エナメル質形成不全の予防法
エナメル質形成不全は予防できるものとできないものがあります。局所的なエナメル質形成不全は心がけ次第で予防が可能です。そのためには次のことに注意しましょう。
1.乳幼児期の転倒に気をつける
とくに1〜2歳くらい頃の乳幼児は動きが活発になり、歯をぶつける危険性が高くなります。歯をぶつける年齢が低いほどエナメル質形成不全の程度もひどくなるとされていますので、お子さんの転倒には十分注意を払いましょう。もし歯をぶつけた際には早めに歯科医院を受診し、その後も経過をみていきましょう。
2.乳歯の虫歯に気をつける
乳歯の虫歯は進行しやすく、少し放っておくとすぐに悪化して神経に達し、歯根の奥まで感染が進むことがあります。日頃から定期的に検診を受け、虫歯ができた場合でも早めに対処できるようにしておきましょう。
まとめ
エナメル質形成不全があるからといって落ち込む必要はありません。フッ素で歯を強化することもできますし、きちんとケアすることで虫歯になるのを防ぐことができます。定期的に歯科医院でチェックをしてもらうことで、適切なタイミングで必要な処置を受けることもできます。また、見た目や噛み合わせの改善も歯科材料で改善することができます。お子さんが小さいうちは自分でケアすることが難しいため、おうちの方が甘いおやつをだらだら与えない、仕上げ磨きを徹底する、定期検診に通うなど、十分に管理してあげてください。
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