歯科医院に行くと必ずと言っていいほど撮られるレントゲン。時には1日に何度も撮られることがあります。「なぜ何度も撮るんだろう?」「本当に必要なの?」「放射線は体に影響ないの?」と不安に思う人もいるかと思います。今回は歯科のレントゲンを撮る重要性、安全性などについてご説明します。
歯科のレントゲンで何がわかる?
歯科のトラブルというものは、直接目で見ることのできない内部で起こっていることがほとんどです。レントゲンを撮ることで、歯や骨の内部で何が起こっているかを知ることができるため、歯科ではレントゲン撮影は不可欠です。歯科医院では一般的にレントゲンで次のようなことを確認しています。
1.虫歯の状態
虫歯の進行具合、詰め物の下の虫歯の有無などがわかります。歯と歯の隙間に虫歯がある場合、肉眼で発見できるのは半分以下と言われていますが、レントゲンを活用すると90%ほどの虫歯を発見することができます。
2.歯根の状態
歯の根っこの形や、神経が残っているか、根っこが折れていないか、感染の有無などがわかります。根っこの表面に歯石がついているかどうかも確認できます。また、歯根部付近の神経に歯髄炎ができていると、炎症が広がり、炎症巣ができてしまう恐れがあります。そのような外観では分かりにくい歯根部分や歯髄部分の病態を確認するためにも、レントゲンが必要になるのです。
3.骨の状態
歯周病でどれくらい骨がなくなっているか、感染や腫瘍、骨折などがないかがわかります。歯周病は慢性的になりやすく、治療も長引きやすい疾患ですので、レントゲンによってこまめに状態を観測する必要があります。
4.詰め物・被せ物の適合状態
詰め物や被せ物と歯との間に段差やすき間がないかがわかります。詰め物や被せ物を取り外して目視で確認することもできますが、歯の内部は観測できないため、不十分な結果になってしまうことが多いです。また、取り外すことで治療工程が増え、患者に不要な負担をかけてしまうことにもなるでしょう。レントゲンを使用すれば、詰め物や被せ物を取り外す必要がないだけでなく、歯の内部の変化も確認することが容易になります。患者の負担を減らし、正確に診断・治療するためにも、歯科用レントゲンが欠かせないといえるのです。
歯医者のレントゲン機器の種類、それぞれの目的
1.パノラマ
口の外側から顎の全体像を撮影するものです。オルソパノラマ、パントモなどとも呼ばれています。口の中や周り全体を大まかに把握できることが特徴です。
<目的>
パノラマでは一枚の写真で歯や骨、顎関節の異常、親知らずの有無や埋もれ具合、上顎洞の状態などさまざまな情報を得ることができます。治療を開始する前などに口の中全体の状態を把握したい時や、親知らずや骨の奥深くなど小さなレントゲンでは写すことのできない部分を見たい場合にパノラマ写真を撮ることが多いです。
また、歯や顎の関節において、確認したい部分が数か所あるときも、パノラマ写真を撮影します。パノラマ写真の被爆量は局部的なデンタル写真の被爆量より多いですが、デンタル写真を複数枚撮影するよりはパノラマ写真1枚の方が被爆量が少なくなるからです。
2.デンタル
小さな写真のフィルムを口の中に入れて、外側からX線を当てて撮影するものです。一度に2、3本の歯を撮ることができ、パノラマと比較すると歯の詳細な状態を映し出すことができます。
<目的>
特定の歯の虫歯や骨の状態をより詳しく知りたい時、治療中の歯の経過を詳しく確認したい時などに撮られます。
3.セファロ
<目的>
上下の顎の大きさ、顎の形、歯の傾斜などを分析し、診断や治療方針の決定をします。また、矯正治療中や矯正治療後にセファロを比較することで、変化を観察することができます。
※この他にも、歯科用CT装置を置いている歯科医院もあります。歯科用CTは、パノラマやデンタルとは違い、3次元的に歯や骨の状態を把握できるもので、インプラントや親知らずの抜歯などにおいて主に使用されます。また、平面的なレントゲン写真では分かり得ない骨の厚みや硬さなども、歯科用CTで調べることが可能です。
歯医者のレントゲンの被曝量は体に問題ない?
歯科を含む医療用のレントゲンで使われているのはX線と呼ばれる放射線です。放射線というと特殊な感じや危険な感じを持つ人も多いですが、実はそれほど特殊なものではなく、日常生活の中でも頻繁に放射線を浴びているのです。自然界から浴びる放射線量と歯科用レントゲンによる放射量を比較してみましょう。
【人間が年間で自然界から浴びる放射線被曝量】
平均約1.5~2.4ミリシーベルト
【歯科のレントゲンを1枚撮って浴びる放射線量】
歯科用CT:0.1ミリシーベルト
パノラマ:0.02ミリシーベルト
デンタル:0.01ミリシーベルト
年間に自然界から浴びる放射線量と比べて、歯科のレントゲンの放射線量は100分の1ほどと極めて微量です。それゆえ、歯科のレントゲンの被曝量は体に問題を起こすレベルではないと言えるのです。歯科以外の分野で使われるレントゲン検査や飛行機に乗ったときの放射量を見ていきましょう。
【胃のX線精密検査】
0.6ミリシーベルト
【胸部のX線集団検診】
0.05ミリシーベルト
【東京—ニューヨーク間を飛行機で往復した場合】
0.2ミリシーベルト
胃のレントゲンや飛行機による被爆と比べて、いかに歯科のレントゲンの放射線量が少ないかが分かりますね。
妊婦さんが歯医者でレントゲンを撮っても大丈夫?
歯科医院でレントゲンを撮る時は、放射線をブロックする鉛でできた防護服(防護エプロン)を身につけます。撮影部位は口周囲ですし、撮影時に発生する放射線もごく微量であることから、妊娠初期を含めて胎児への影響は限りなく少ないと言えます。
胎児に影響がでる放射線量のレベルは50ミリシーベルト以上とされています。歯科におけるレントゲン撮影に換算すると、歯科用CTなら500回以上、パノラマ写真なら2500回以上、デンタル写真なら5000回以上という計算になります。そのため、もし妊娠していることに気付かないまま歯科でレントゲンを撮ったとしても、まず影響はないと考えられます。ですが、妊娠していることが分かっている場合は、念のためレントゲンの撮影を避けたり、必要最低限の回数にとどめたりする方が良いでしょう。妊娠中の方は必ず歯科医師にその旨を伝えてください。
妊娠中は虫歯や歯周病になりやすい時期
妊娠中は女性ホルモンが増加することで、歯周病菌が増えやすくなります。それに加え、口内が酸性に傾きやすくなりますので、虫歯が増えやすい状況にもなります。また、つわりによって歯を磨く度に吐き気を催すので丁寧に磨けなくなったり、間食が増えて虫歯リスクが高くなったりする人もいます。
このように妊娠中は虫歯や歯周病にかかりやすい時期と言えるのです。妊娠したことが分かったら、まずは歯科検診を受け、問題のある部分は早めに治すことができるでしょう。治療の上で局所麻酔やレントゲン撮影が必要になった場合でも、基本的には首より上の部分だけの処置ですので胎児に影響を与えることは少ないと思われます。どうしても不安な場合は麻酔やレントゲンを使用しない応急処置程度にとどめておき、出産後に本格的な治療を受けるようにしてください。
まとめ
歯科のレントゲンも進化してきており、近年ではデジタルレントゲンが主流になってきています。デジタルレントゲンは放射線の被曝量がさらに少なくなり、画像をデータ化して保存することができるため、年数がたってもクリアな画像が見られるといった利点があります。
レントゲンで歯や骨の状態を詳しく知り、診断をしたり、治療計画を立てたり、経過を見ていくことはとても大切なことです。歯科医院ではむやみにレントゲンを撮ることはなく、必要なタイミングで必要な種類、撮影回数を選択して実施しています。治療を受ける際は皆さんも過度に被爆量を恐れるのではなく、安心して歯科治療に臨んでくださいね。
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