お子様の舌足らずな話し方(発音)が気になっている親御さんも少なくないのではないでしょうか。また、小さい頃からご自身の滑舌の悪さ(サ行がはっきりと発音できないなど)にお悩みの方や、私生活ではさほど滑舌の悪さを気にしていなかったのに、仕事で話すときに支障が出たり他人に指摘されたりして不具合を感じるようになった方もいるのではないでしょうか。
発音の悪さや滑舌の悪さにはいくつかの理由が考えられますが、もしかしたら「舌」に原因があり、発音や滑舌が悪くなっているのかもしれません。発音に影響を与える「舌」のトラブルと治療法について説明してまいります。
滑舌や舌でお困りではありませんか?
- 滑舌が悪い
- 長い時間話すと舌が疲れたように感じる
- 速く話そうとすると舌がもつれる
- 無意識に舌足らずな話し方になってしまう
- あっかんべーができない
- 話していると人によく聞き返される
- サ行が発音しにくい
など、日常生活において困ってしまう面が多数ある方は、一度、舌の状態を歯科医院で診てもらうことをおすすめします。舌の裏側にある舌小帯(ぜつしょうたい)に滑舌の悪さや発音の悪さの原因がある場合は、トレーニングや手術によって改善できる可能性があります。
舌小帯とは?
舌の先端を上あごにくっつけるように持ち上げてみてください。舌の裏側にヒダが見えませんか?このヒダの部分が舌小帯です。舌小帯には適度な長さや適切な位置がありますが、人によっては生まれつき舌小帯が短いことや、適切な位置よりも前側に付いていることがあります。
舌小帯短縮症
舌小帯が生まれつき短かったり、舌の先端に近いところについていたりすると、舌を動かしにくい、発音がしにくいというような不具合が出てきます。このような状態を舌小帯短縮症といいます。
【軽度】
- 舌小帯が細いヒモのように見える
- 舌先を上あご、口の横につけられる
- 「らりるれろ」が発音しにくい
- ラ行の発音以外は、日常生活にほとんど支障がない
【中等度】
- 舌小帯がしっかりした白いヒモ状、またはヒダや膜のように見える
- 舌を前に出したときに舌先がハート型にくびれる
- 舌先を上あごや口の横につけられない
- 舌で唇をなめることができない
- 「ラ行」を発音しようとすると「ダ行」に聞こえることがある
- 速く話そうとすると舌がもつれる
【重度】
- 舌を前に出そうとしても下唇ぎりぎりくらいまでしか出せない
- 舌を上にあげることができない
- 発音しにくい
- 食事がしにくい
その他の症状
舌小帯短縮症が重度である赤ちゃんは、舌を上手に使えないために「ミルクや母乳を飲むことができないこともあります。上手に飲めない状況が続くと、発育にも影響が出てきますので、早めに小児科を受診し、舌小帯を切除するなどの適切な治療を受ける必要があります。
また、食事や会話などをしていないときは、舌は口内では上あごに接するように控えていることが多いです。ですが、舌小帯が短すぎると、上あごに舌が届かず、習慣的に下の前歯を舌で押してしまうことになります。常に下の前歯を押すことで骨格が変わり、下の前歯が上の前歯を覆うように重なる「受け口」になってしまうこともあるのです。
舌が上あごに届かないことで、「歯並びが悪くなる」こともあります。常に舌が下の前歯だけを押して上の前歯を押さないと、上あごが適切な幅に広がりません。適切な幅に広がらないと、永久歯がすべて歯列に収まらなくなってしまい、結局は歯並び(特に上の歯の歯並び)が悪くなってしまうのです。
精神的な影響があることも
滑舌の悪さや発音の悪さを他人に指摘されることで、子供が人前で話したがらないようになってしまうことがあるかもしれません。自分の意見を言うことを恐れたり、内向的になったりすることもあるでしょう。
また、歯並びの悪さが顕著になることでも、子供が人前で口を開けて話をすることを嫌がるようになることがあります。受け口であることをからかわれて、人と付き合うことが億劫になることもあります。自分自身に自信を持って生活していくためにも、発音の悪さや滑舌の悪さ、歯並びなどを早めに治してあげるようにしたいものです。
もちろん、発音の悪さや歯並びの悪さの原因が、舌小帯以外にあることもあります。歯科医師の診察を受け、どこに問題があるのか、また、必要な治療やトレーニングはなにかを尋ねてみるようにしてください。
必ず治療が必要?
日常生活に問題がない場合は、特に治療は必要ありません。あまりにも発音が聞きづらい場合や食事がしにくい場合等、日常生活に多くの不便を抱えるときは、歯科医師に相談し、適切なトレーニングや手術を受けるようにしましょう。
もちろん、お子様の状態も同じです。特に問題がないように見えるときは診察を受ける必要はありませんが、あまりにも発音が悪いときや食事やミルクが飲みにくそうなとき、歯並びに影響が出そうなとき、「中度」や「重度」にあてはまるときは歯科医師に相談してみることが勧められます。
滑舌や発音が悪くなる舌小帯短縮症の治療方法
では、実際にどのようなトレーニングや手術で、舌小帯短縮症の改善を目指すのでしょうか。
1.滑舌を良くするトレーニング
舌小帯短縮の程度が軽度の場合は、舌を上手に動かすトレーニング(舌の機能訓練)を行うだけで、症状が軽減される場合もあります。
主なトレーニングの目的と内容は次の通りです。
- 正しい舌の位置を覚える。舌小帯短縮症の人は、舌が上あごについていないため、歯並びや顎の骨格に影響が出てしまうことがあります。常に正しい位置に舌を付けることができるように指導を受けます。
- 正しい飲みこみ方を覚える。舌小帯短縮症の人は、飲み込むときの舌の位置にも問題があることが多いですので、正しい飲みこみ方を覚えることで、徐々に舌小帯を伸ばしていくように訓練します。
- 口の周りの筋肉の使い方を覚える。舌が動きにくいために、舌をほとんど使わずに発音する人も多くいます。口の周りの筋肉を正しく動かして発音することで、発音の悪さや滑舌の悪さを改善します。
2.マウスピースの使用
すでに歯並びや顎の骨格に舌小帯短縮症の影響が見られている場合は、滑舌を良くするトレーニングを実行しながら、マウスピースを装着して歯並びや噛み合わせ、受け口を矯正していきます。マウスピースによっては舌の位置を矯正することもできますので、舌小帯短縮症のトレーニングが早く進むこともあります。
3.舌小帯切除
トレーニングだけでは舌の動きを改善するのが難しいと判断された場合には、舌小帯を切る手術(舌小帯伸展術)を行います。
ですが、舌小帯を切っただけでは、舌小帯短縮症による不便は解消されません。そのままでは、舌小帯が短かったときと同じような話し方や発音になってしまいますので、手術の後は、動きやすくなった舌を上手に使いこなせるようにするために、舌の機能訓練をかならず行います。正しく発音するための舌の動きの訓練をし、舌の筋力を鍛えることで発音障害を改善していきます。
舌小帯伸展術は、保険対象内の手術です。3割負担で3千円程度、時間にして10分程度の手術になります。麻酔をしてから行いますので、痛みは特にありませんが、いつの時期に実施するのが良いか担当医としっかりと話し合うことが必要です。あまり遅い時期に手術をすると、歯並びや受け口が深刻な状態になってしまうことがありますので、上の前歯が永久歯に生え替わった頃の7歳~9歳ごろに実施することが多いです。
まとめ
滑舌の悪さや食事のし辛さなどが気になっている方は、一度歯科医院で相談してみましょう。舌小帯が関係している場合は、手術やトレーニングによってすぐに悩みを改善できることもあります。専門的な診断と治療によって、普段の生活をより良いものにしていきたいものですね。
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