なんとなく奥の歯が浮いているような経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。違和感を覚えるときはちょっと驚きますが、しばらくすると治ってしまうことが多いですのでそのままにしてしまいますよね。
何だかまわりの歯に比べて1つの歯だけ浮き上がっている感覚がある。でも、鏡を見ても特に違和感はない。そのようなときは、もしかしたら何か大きな病気がある前兆かもしれません。今回は、歯が浮いたような感じの原因と対処方法についてお話ししていきます。
歯が浮く感じとは?
歯の周りには、噛んだときに硬いものや軟らかいもの、くっ付きやすいものなどを判断する「歯根膜(しこんまく)」という組織があります。この歯根膜にダメージを受けると、歯根膜は流れている血液やリンパ液の量を増やしてダメージを回復しようとします。このとき歯根膜が一時的に厚くなり、骨から歯が浮いているように感じるようになるのです。
歯が浮く原因と対処方法
では、どのようなときに歯根膜はダメージを受けるのでしょうか。歯根膜がダメージを受ける原因と歯が浮いたように感じるときの対処法について探っていきましょう。
1.歯の根っこ先が膿んで歯が浮くように感じる
虫歯の進行などによって歯根の先のあごの部分に膿が溜まると、歯茎や歯根膜が膿の原因である歯を押し出そうとするために、歯が浮いたような感じがすることがあります。膿を取り除き、原因となる細菌を無くせば、浮いた感じは治まってきます。
このような理由で歯が浮いたような感じを覚えるときは、歯茎が腫れたり痛みが強くなったりすることがあります。なるべく早く歯科医院を訪れ、歯根の治療や歯根の先の膿の袋を取り除きましょう。
対処方法 <根管治療(歯の根っこの治療)>
歯根を治療します。膿が溜まっている歯のかぶせ物、詰め物などをとり、歯根の中から膿を出していきます。痛み、炎症などを鎮静化させ、歯根部をきれいにしていきます。膿の除去と腫れた部分の治療が終わったら、かぶせ物や詰め物を再度入れて完了です。
2.歯周病で歯が浮くように感じる
歯周病は細菌感染症です。歯みがきをきちんとせずに放置していると、歯周病菌が歯茎と歯の間から入り込んで炎症を起こすことがあります。炎症により歯茎が腫れ、歯が浮いたような感覚を覚えるのです。特に疲れがでているときは、体の抵抗力が落ちるために、いつも以上に歯が浮いているような感じがすることもあります。
対処方法 <歯石取り>
歯石がついていると歯石に細菌が入り込んで毒素を出し続けますので、歯周病の治療が難しくなります。歯周病の治療も必要ですが、これ以上、細菌が増えないためにも、歯に付いた歯石や歯垢をしっかりと取り除くことが必要になります。
専用の器具で歯石や歯垢を落とすこともありますが、落ちにくいときは超音波の器具などを用いることもあります。歯石をしっかりと落とすと、歯周病による症状も落ち着き、歯茎の腫れが引いて引き締まっていきます。
3.歯ぎしりや食いしばりで歯が浮くように感じる
歯ぎしりはほとんどが寝ている間に行われます。無意識に行っている歯ぎしりによって、歯は強い力で左右に大きく揺さぶられます。歯が強い力で揺さぶられると、歯根の周りの歯根膜も強い力で揺さぶられ、引っ張られるように感じてしまい歯が浮いたようになります。
食いしばりも同様です。食いしばりは寝ているときだけでなく、起きているときにもしてしまうことがあります。WEBの画面を見ているときやテレビを見ているとき、本を読んでいるとき等、何かに集中しているときに無意識で歯を食いしばっている人は少なくありません。食いしばりによって歯に強い圧力がかかると、歯根膜にも圧力がかかり、歯が浮くような感じを覚えます。
対処方法 <マウスピース>
起きている間の歯の食いしばりは、こまめに歯を食いしばっていないか意識することで改善することができます。目に付くところに「食いしばり注意」と書いた紙を貼っておき、一日に何度もチェックするようにしましょう。
寝ている間の歯ぎしりや食いしばりは、注意するだけでは改善することができません。歯科医院で専用のマウスピースを作ってもらい、無意識で歯を食いしばったりぎしぎしとこすったりしても歯に強い圧力がかからないようにすることができます。
マウスピースは保険対象のものと保険対象外のものがありますが、保険対象内のものなら5千円程度(型取りや初診料、再診料等は除く)で作ることができます。マウスピースを装着することで歯ぎしりを予防できるだけでなく、歯のすり減りを防いだり、セラミックのかぶせ物や詰め物をしている場合はセラミックの傷みも防いだりすることができます。気になる方は、歯科医院で相談してみましょう。
4.疲労やストレスで歯が浮くように感じる
疲労やストレスによって、体全体の血液やリンパ液の循環が悪くなることがあります。肩こりや頭痛、身体全体のだるさなどは、血液やリンパ液の循環が悪くなったことにより起こることが多いです。血液やリンパ液の循環が悪くなると、歯根膜へ流れる血液量やリンパ液量にも影響を与え、歯が浮いたような感じを覚えることがあります。
対処方法 <ストレス解消とマッサージ>
ストレスや疲労は、歯科医院等の医療機関では抜本的な改善は見込めません。普段から疲れを溜めない生活をすることや、ストレスに対してストレスと感じないようにすること等が大切になります。
歯の浮いたような感覚が気になるときは、歯ブラシで軽く歯茎をマッサージすることが勧められます。歯茎周りの血行が良くなりますので、歯が浮いたような感覚の改善も期待できます。ただし、強くマッサージすると、歯茎自体を傷つけてしまうことがあります。歯茎専用のブラシもしくは毛先が柔らかめの歯ブラシで、手首の力を抜いて短時間マッサージして下さい。
5.固いものを噛みすぎで歯が浮くように感じる
固いものを食べ続けたり、長時間噛む行為をしていたりすると、歯が浮いたような感じがしてくることがあります。これは歯に圧力が継続的に加わったことで、歯根膜がリラックスできない状況が続き、ダメージを受けてしまうことが原因です。
対処方法 <歯とあごを休める>
歯根膜にダメージを受けると、回復させるために歯根膜に血液やリンパ液が集まってきます。そのため一時的に歯根膜が厚みを増し、歯と歯茎が離れているような感じがするのです。固いものを食べ、歯やあごを使いすぎたと思ったら、食事を止めて安静にしておくことが大事です。
また、長時間ガムなどを噛み続けることでも、歯と歯茎が離れているように感じることがあります。噛むことで歯の健康を促進できるといった特定保健用食品(トクホ)に指定されたガムもありますが、あまりにも長時間噛み続けないように心がけましょう。
まとめ
口の中は、体調の崩れやストレスなどを如実に反映します。疲れやストレスによって歯茎が腫れることや歯が浮くように感じること、少しの刺激で出血することなどもありますので、こまめに観察するようにしたいものです。
歯が浮くような感覚も同じです。身体の不調や歯の異常、身体にとって良くない習慣などが、歯が浮くような感覚として表現されることがありますので、何が原因になっているのかしっかりとチェックしてみることが大切だと言えます。
歯が浮くような感覚が長続きする場合は、すぐにかかりつけの歯科医院で相談してみてください。歯周病や虫歯など、早めに治療する方が良い病気が見つかることがあります。また、歯ぎしりや食いしばりといった歯の健康のためには絶対に止めたい習慣が指摘されることもあります。いずれも保険対象内での治療も可能ですので、気軽に歯科医院を訪れ、健康な口内環境・身体状態を手に入れていきましょう。
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ムシバラボを運営するキーデンタルクリニックは、東京の赤坂見附駅から徒歩1分、永田町駅から徒歩3分の歯科医院です。できるだけ抜かない削らない治療を心がけ、痛みの少ない治療方法や先進治療を取り入れることで患者様の負担を軽減するようにしています。良い歯医者さんと巡り会えない方は是非一度、ご来院ください。